日産が世界に誇るスーパースポーツ「GT-R」。2026年4月には次期モデルの登場も明言され、日本国内だけでなく世界中のファンから期待されているモデルです。そんなGT-Rの最終型に乗れる機会に恵まれましたので、名車R35型GT-Rを試乗して振り返るとともに、現在のリセール状況についても触れていきます。

「スゴい! ここまで進化していたとは……」これがMY25の最終型GT-Rに乗った直後の、正直な感想でした。思わずこぼれた感動の言葉の裏には、やはり前回乗った中期型の「NISMO(ニスモ)」の存在、そして昨今のスーパースポーツのトレンドが頭をよぎりました。現状の国産車では、ここまで高いレベルの完成度を誇るGT(グランツーリスモ)は存在しないでしょう。最終型のR35は、まさに究極のGTでした。
◆プレミアムエディションの乗り味とは
2020年代になってから、続々と生産が終了されている国産のスーパースポーツたち。世界に先駆けてハイブリッド4WDを搭載したハイテクスーパーカー、ホンダ「NSX」は2022年に生産を終えました。そして、最近ではV8ユニットを搭載したレクサスの「LC」も、26年7月をもって生産終了。R35型GT-Rもそのうちの1台です。25年8月にラインオフを終え、18年間の歴史に幕を閉じました。今回の試乗モデルは、そんなR35型の最終販売車であった2025年モデル(MY25)。グレードはプレミアムエディションのTスペックです。

冒頭にあった「究極のGT」という言葉を見て、GT-Rとは本来ならパフォーマンス性能を追求した究極のスポーツカーなのでは? と、GT-Rをよく知る人ほど思ったかもしれません。これには、最終型のグレード展開にひとつの答えがありました。
MY25には大きく分けて4つのグレードが設定されていて、最上級のNISMO以外には、4つのエディションが用意されていました。ピュア/ブラック/プレミアム/トラックの4種のうち、今回のプレミアムエディションはもっともラグジュアリーな仕様。そのなかでも、さらに独自の高級感あふれるインテリアや、NISMOのバランス取り済みパーツをエンジンへと組み込んだ上級グレード、「Tスペック」が試乗車です。

GT-RはNISMOというサーキット特化型のグレードがあるからこそ、ほかのグレードは快適性の向上に振ることができたのでしょう。GT-RのR(レーシング)部分をNISMOが担うのだとすれば、GTの部分を究極まで突き詰めた仕様が、このプレミアムTスペックだといえます。とにかく街乗りの速度域から乗り心地がよく、一般的なスポーツカーの引き締まった足まわりを想像していると拍子抜けするほどです。

これには、日産自慢の電子制御技術が大きく関わっています。センタークラスターの一番下に3つ並ぶ、電子制御の切り替えスイッチ。真ん中にあるサスペンションの減衰切り替えを「コンフォート」にすれば、瞬時にR35は快適仕様へと変貌します。コンフォート/ノーマル/Rと3パターンが選べる電子制御サスペンション設定は、並ぶ3つのスイッチの中でも、オーナーが実際に使う機会がもっとも多くなるスイッチでしょう。コンフォートに切り替えると、街乗りの速度域では細かな段差や路面のうねりなどを素早く収束し、フラットで快適な乗り心地を実現します。

速度域のもう少し高い高速道路や、ハンドリング性能を重視したいワインディングなどでは、ノーマルモードが最適かもしれません。少し足まわりが引き締まるため車体の揺れが収まり、スポーツ走行をより楽しめるようになります。Rモードは、もっとレーシーな仕様ですのでサーキット走行などに最適でしょう。一般道でコンフォートモードの乗り心地を味わってしまうと、ほかのモードでは疲れてしまうかもしれません。そのくらい快適で、身体が揺すられない仕様です。
◆世界でもトップクラスのGTカー

このような柔らかめのサスセッティングは、昨今ではスポーツカー界隈でも珍しくなく、むしろ常識的なセッティングにもなってきています。まさに電子制御のアクティブサスペンション“さまさま”ともいえるコンフォートな乗り心地は、世界の名だたる最新スポーツカーが、こぞって採用する仕様。それこそポルシェ 911カレラや、フェラーリ ローマをはじめ、ランボルギーニやアストンマーティン、マクラーレンなどのいわゆる「スーパーカー」と呼ばれるクルマたちは、みな快適な乗り心地のドライブモードを備えています。その快適度は、低いボディフォルムからはとても想像ができないほどのよさ。もはやマセラティやベントレーなどの伝統的なGTブランドを脅かすほど、至極快適な乗り心地を提供しますので、乗るたびに毎回驚かされます。

GT-Rの驚くべき点は、これら最新スーパーカーと同等の乗り心地を実現していることなのです。忘れてはいけないのが、R35型GT-Rはデビューから18年間1度もフルモデルチェンジを行わず販売されてきた、ロングライフモデルだという点。毎年のように改良され、随時アップデートしてはいたものの、シャシーやボディモノコックなどの骨格部分は基本的に変わりません。「なのに、この乗り心地?」と、知れば知るほど驚きます。まったく世代の古さを感じさせない、日産の持つ高い技術力や開発力があってこそ成せる乗り心地なのです。

プレミアムエディションに乗って驚いたのは、乗り味だけではありません。同じくらい驚いたのは静粛性でした。以前中期型のNISMOへ試乗したときは、車内にこだまするメカニカルなサウンドがとても印象に残りました。特にセンタートンネル内を通るドライブシャフトから発せられる音は、耳障りにもなるレベル。今回の試乗にもそれなりの覚悟を持って臨みましたが、その覚悟は見事に裏切られます。車内に響くのは、心地よいエンジンサウンドのみ。タイヤから発せられる走行音や、風切り音も極力抑えられているため、こと日本の道路速度域ではストレスに感じることは皆無でしょう。まさにプレミアム仕様。乗り心地も含め、長距離を快適に走るための本物の“GT”が味わえるクルマに仕上がっていました。

◆NISMO譲りの高精度エンジン

快適性が向上したからといって、本来のGT-Rらしいピュアなスポーツ性能が損なわれているわけではありません。ハンドリングは意のままに向きを変えることができ、直進安定性もバツグン。ひと度アクセルを踏み込めば、強烈な加速感が乗員を襲います。4WDならではの安心感も、特筆すべきレベル。国内では敵なしの無双状態なのはデビュー時から変わらずですが、今でも世界トップクラスの性能を有している点は、間違いありません。快適性との両立ぶりは、国産車レベルをはるかに凌駕している存在でもあります。

今回の試乗車は、Tスペックという上級仕様。エンジンに手が加えられていることが大きな特徴です。NISMOのみに供給されていた、高精度重量バランス部品をエンジン内部のピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどに採用。よどみなくきれいに高回転まで回るエンジンは、本当に貴重な存在だといえます。前述の強烈な加速は、このエンジンのおかげともいえるでしょう。ツーリングから、本格的なサーキット走行まで、すべてにおいて余裕の性能を発揮するエンジンです。
◆Tスペックはインテリアも上質

スポーティとラグジュアリーを高い次元で両立させた、プレミアムエディションTスペックは、内外装でも専用の装備が目をひきます。
外装の多くはMY24と大きく変わる箇所はないものの、細かな違いがあります。例えば、リアスポイラーにはMY24でデビュー後初めてアップグレードされたスポイラーが採用されますが、Tスペックのみ専用のカーボン製へと変更されています。ルーフを流れてきた空気をより当てやすくするため、リアフード後端のギリギリまでオフセットした形状自体に変更はありません。

ほかにも、NISMO譲りのカーボンブレーキディスク&イエローキャリパーや、ブロンズカラーのレイズ製アルミホイール、専用拡張フェンダーなどTスペックならではの装備が彩を添えます。

プレミアムエディションTスペックの上質さをある意味一番上手く表現しているのは、インテリアの仕様かもしれません。深いグリーンを基調とした落ち着きのある色調で仕立てあげたインテリアには、ふんだんにレザーが使用され、ひと目でプレミアムカーだと理解できます。レザーとスウェードのコンビシートももちろん専用。ステッチにはゴールドカラーが用いられています。そして、ルーフにも専用のステッチが入るほどのこだわり。GT-Rがただの走りに特化したクルマではない、日産最高峰のプレミアムカーだということを主張する部分でもあります。


◆国産車では異例のプレミア化
さて、そんな最終型のMY25ですが、MY24に引き続き販売方法が抽選となりました。最後の純内燃機関GT-Rと噂されたMY22、そしてMY24と、発表後に即完売という人気ぶりを見せたGT-Rですが、R35自体の生産終了がオフィシャルにアナウンスされたMY25はやはり異常な人気ぶりでした。抽選の倍率は20~30倍ともいわれていますが、実際はそれ以上とも噂されています。抽選をするのにも、過去にGT-Rや日産車の購入があるディーラーのお得意様や、MY24の抽選に漏れた人が優先されたため、実質は一元様お断り状態だった販売店もあったようです。

MY24よりもプレミア度が増し、争奪戦が過酷だったMY25。生産台数はわずか1500台ほどしかないため、中古車市場での高騰ぶりはほかの年式と比べても大きくなっています。

1年の転売禁止措置が取られたため、まだ市場に出回っている数は少ないものの、ノーマルグレード車で新車価格の500~700万円ほど上乗せの相場。TスペックやNISMOなどの希少グレードになると、1000万円以上上乗せしたプレミア価格のプライスタグとなっています。国産車としては異例の金額と、プレミアぶりを見せているMY25。やはり最後のR35として人気は維持し続けると予想されますので、今後も相場は高値安定でしょう。

◆世界中が期待を寄せる次期型

まさに買えた人が心底うらやましくなる、MY25のGT-R。今回試乗できたのも幸運でしたが、Tスペックの高性能ぶりには本当に驚きました。まさに一生の財産になる、代物。日本が世界に誇る名車といえるでしょう。

冒頭でも触れましたが、26年の4月には日産の社長自らが次期GT-Rの開発を明言し、大きな話題になりました。注目のパワーユニットは、どうやらHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)が有力で、R35型に搭載されたV6ユニットをベースにするのではとも噂されています。今のところ、2028年までには具体的な発表をし、2030年までにはお披露目ができるようにしたいと、日産の関係者が発言していますので、登場することはほぼ確定といえるでしょう。

そして、26年の12月にも発表される新型スカイラインとの関係性にも、注目が集まっています。スカイライン発表の舞台は、12月の「NISMOフェスティバル」では? とも噂されていますが、その内容がわかるのもあと数ヶ月。GT-Rにもつながるであろう情報にも期待できます。

これまで電動パワーユニットに力を入れてきた日産が、持てるすべての技術を投入するであろう、次期GT-R。世界中が期待しているモデルに関する今後の日産の発表から、目が離せません。
<文&写真=青山朋弘>










