日本市場でもかなり人気が高く、認知度が高まっているルノーのMPV「カングー」。商用車ベースとは思えないほどの快適な乗り心地と多彩な積載能力で、国産MPVにはない独自の魅力を放っています。そんなカングーに、3列シートのロングバージョンが追加されました。その名も「グランカングー」。本国では先代から販売されていましたが、日本への正規輸入はこの世代が初めてとなります。

◆あっという間に完売する人気者は、意外に大きめサイズ
2026年2月に販売が開始されたグランカングー。カタログモデルとしてではなく、300台の限定車(ベージュ色のみ)として発売しましたが、わずか2週間足らずで完売するほどの人気ぶりを見せました。

そして限定の第2弾として5月14日に新たに発表された100台は、黄色と緑の2色から選べる仕様。こちらも抽選販売の申し込み受付期間は早々に終了してしまい、6月4日にはもう第3弾のグレーボディが発表されました。しかし、こちらもわずか50台の少数限定販売(抽選販売)ですので、完売は必至といえるでしょう。

第3弾まで色違いで登場してきたグランカングーですが、改めてどんなクルマなのかを確認しておきましょう。

グランカングーは、実際に目にするとその大きさに驚く人も多いかもしれません。なにせ、ホイールベースは3100mmもあります。トヨタ アルファードが3000mmですので、さらに100mm長いサイズ。全長は5m近くもありますので、国産の大型ミニバンと同じサイズ感だと考えて間違いないでしょう。

大きさが国産の大型ミニバン並みですので、かなり大きな部類に入る点はユーザーを選んでしまいます。しかし、いざ乗ってみればそのほかの部分で正直いい部分が目立ちました。その筆頭に来るのは、乗り心地のよさです。
◆ルノーらしい優れた乗り心地とフットワーク

フランス車は乗り心地のいいことで知られていますが、このグランカングーも例に漏れず。たっぷりなストローク量を持つサスペンションは、硬すぎず柔らかすぎない絶妙なセッティングで、街乗りから高速道路まであらゆる速度帯で快適な乗り心地を提供してくれます。加えて、シートのクッション性もさすがルノーと唸らせる出来のよさ。お尻がしっかりと収まり、左右に動きにくい部分も評価の高いポイントでしょう。

グランカングーのシートは、2列目と3列目が着脱できることが特徴。ですが、外した際の持ち運び性はあまり考慮されていないと思えるほど、シートの作りがガッチリシッカリしています。特に2列目シートは、運転席や助手席と同レベルの乗り心地を実現。頭や身体が揺さぶられることは、走行中皆無でした。3列目は少々サイズが小ぶりになるものの、それでも遜色ない乗り心地を提供してくれました。

乗り心地のよさは、走行安定性のよさも大きく影響を受けています。ロングホイールベースがもたらす直進安定性は、グランカングーならでは。特に高速道路での安定感は抜群で、安心してアクセルを踏んでいられます。余計な揺れがないので、同乗者も快適に過ごせるでしょう。

◆走りのハイクオリティさは国産車じゃ勝てない

高速域での静粛性も特筆すべきポイントです。風切り音やロードノイズが気になることは、試乗中一度もありませんでした。ドライバーのストレスを最小限に抑えるためのクルマ作りをしていることは明白で、特にロングドライブ時には疲労が少なく感じるでしょう。

高速道路だけでなく、一般道やワインディングでは走りのよさも光ります。ニュートラルなステアリングフィールで、しなやかな足まわりを生かしながらも、コーナーではしっかりと踏ん張るタイプのセッティング。大柄なボディを感じさせないほど、フットワークの軽い動きを見せてくれました。

走りにおけるすべてにおいて、かなり高いレベルでバランスされているのには正直驚きました。大きくなっても背が高くなっても、さすがルノー車と唸らざるを得ません。ここまで走りのクオリティが高いと、正直この後国産ミニバンに乗る気にはならなくなるでしょう。この快適な乗り心地だけでも、価値のあるクルマだといえます。

◆高速燃費はかなり優秀!


そして、最近のルノー車に共通するといっても過言ではない燃費性能の高さでも、優れた数値が記録できました。今回は高速道路のみでの計測にはなりましたが、いつもの東名川崎~新秦野(新東名)までの往復約100kmで実施したところ、往路で17.9km/L、復路で20.8km/Lをマーク。平均で19.4km/Lの好燃費ぶりを見せてくれました。

グランカングーのパワートレインは、1.3Lのガソリンターボと7速のDCTとの組み合わせのみ。ハイブリッドやクリーンディーゼルといった飛び道具なしの純粋なICE車としては、かなり優秀な燃費性能だといえるでしょう。ちなみに、カタログ上での高速道路燃費(WLTCモード)では、16.4km/L。90km/h巡航で、カタログ値を大幅に上まわることができました。

そのほかにも、ユーティリティ面ではカングー特有の観音開き「ダブルバックドア」をはじめ、ワイヤレス接続ができるスマートフォン連携システムや、ADAS(先進運転支援システム)などの装備面も充実。多彩なシートアレンジも大きな魅力です。ファミリーユースとしてはまさに申し分なしの、使い勝手のいいMPVに仕上がっていました。

◆ダブルバックドア仕様の秘密

ここまで見れば、日本市場にマッチした優れたMPVだということは十分理解できるのですが、じつはいい部分ばかりではありません。まずは、その販売体制。これまで3回販売されたいずれも、台数があまり多くない限定車としての販売であり、カタログモデルとしてラインナップされていないことが挙げられます。

これには大きな理由がありました。ルノー広報に伺った話なのですが、日本においてカングーならではの装備として人気のダブルバックドアは、じつは本国のグランカングーには設定がありません。日本だけの特別仕様だということなのです。

この日本仕様を生産するにあたり、本国でも型式を新たに取得しなければならないなどひと手間がかかった関係で、通常の5人乗りに比べ導入が遅れてしまったという経緯もあります。そして導入数が限定的なのは、生産台数が日本向けだけにそこまで割けないというのが一番の理由。世界的に見て存在自体が特殊なのです。段階的に限定的にしか生産することができないという、根本的な理由がそこにはあります。
◆デメリットが気にならないほどの優等生ぶり

あとは、スライドドアが電動ではない、2列目シートのカップホルダーがない、ダブルバックドアは後方視界があまりよくない、など多少気になる点はありましたが、どれも小さな問題点ばかり。使っていれば慣れてしまうことも多いでしょう。それよりも魅力やメリットの方が断然多いグランカングー。購入できた人は、かなりラッキーなのかもしれません。

中古車市場におけるリセールも、希少価値と需要の高さからしばらくは高値で安定すると予想されます。ライバルには、同じフランス車でシトロエン ベルランゴやプジョー リフターなども揃っていますが、ダブルバックドアはグランカングーだけ。狭い日本の駐車場で重宝するアイテムは、唯一無二の魅力といっていいでしょう。

今後も、導入数は限られるとは思いますが、継続的に販売されるであろう魅力的なMPVのグランカングー。購入をお考えでしたら、早めにディーラーへ行くことをオススメします。
<文&写真=青山朋弘>
■グランカングー クルール(FF・7速DCT)
主要諸元
【寸法・重量】
全長:4910㎜
全幅:1860㎜
全高:1810㎜
ホイールベース:3100㎜
トレッド:前1580/後1590㎜
車両重量:1690㎏
乗車定員:7人
【エンジン・性能】
型式:H5H
種類:直4DOHCターボ
ボア×ストローク:72.2×81.4㎜
総排気量:1333cc
最高出力:96kW(131ps)/5000rpm
最大トルク:240Nm(24.5㎏m)/1600rpm
使用燃料・タンク容量:レギュラー・54ℓ
WLTCモード燃費:14.7㎞/ℓ
最小回転半径:6.2m
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後205/60R16
【価格】
459万円(※初回限定車の価格。すでに完売)







