86の買取参考相場と傾向
21年に2代目GR86へとモデルチェンジしたトヨタ 86ですが、登場から2年以上経った23年12月現在でも中古車市場では初代が中心で流通しています。特別リセールのいいクルマではありませんが、基本的に欲しい人が指名買いするクルマですので、同年代の他車に比べれば高値で推移しているといえるでしょう。
市場の中心である初代の中古車は、23年12月現在約1000台が流通しています。これは1世代のスポーツカーとしては現在日本国内最多の台数であり(例・マツダND型ロードスターは500台以下)、流通量はかなり豊富といえます。相場は100万円以下から400万円オーバーまでじつに幅広い価格帯となっていますが、GR系グレードや限定車を除けば通常の中古車のセオリー通りで価値が決まっている傾向が見られます。
走行距離は少なめであればあるほど高額になりますし、改造していないノーマル車両が好まれることも同様です。全体的には、16年8月以降の後期型は人気があるため価格が高くなる傾向。そして、AT車よりもMT車のほうが高額で取引されています。買取相場は、200万円がつけば御の字と考えたほうがよく、前期型では100万円以下の場合も多々見られます。
しかし初代86には一部例外があります。それが、先述のGR系グレードです。86にはGRモデルのピラミッド通り、上からGRMN、GR、GRスポーツと3種類のコンプリートカーが登場していて、それぞれ通常グレードよりも高値で取引されているケースが多くなっています。
前期型の最後に登場した100台限定のGRMNに関しては、ほとんどが市場に出まわらない代物。売っていたとしてもプライスは応談となっているケースが多く、発売当時648万円だったクルマがどれくらいまでプレミアがついているのかは想像できません。買取に関しては、売り時はほとんど関係なくかなりの高額取引が期待できるでしょう。
後期型からグレードとして設定されたGRとGRスポーツには、中古車市場で通常グレードの100万円プラスくらいの価格が設定されることも多く見られます。新車時の売価はGRスポーツが380~400万円ほど、GRに関しては500万円オーバーと、ノーマルグレードと比較してもだいぶ高くなっていました。状態にもよりますが、高額買取が期待できるグレードだといえます。
2代目GR86は、新車の販売構成比では約70%を占めるほど最上級のRZが人気。中古車でもその傾向は強く出ています。ただし、標準グレードのSZだからといって安価なことはまったくなく、RZとそこまで相場が大きく変わるわけではありません。まだまだ登録だけしてある未走行車なども多く、中古車相場平均は344万円と高値で安定しています。
86の買取時の注意点
この手のスポーツカー買取で問題になるのは、改造箇所をキープするかノーマルに戻すかの選択です。86の場合は市販されているパーツの数が、純正とサードパーティを合わせると膨大になります。しかしながら、ノーマルのオリジナルコンディションが一番高額になりやすいのも事実。こればかりは、改造した度合いによって決めるというのが対コストという点では賢明かもしれません。
ライトチューン程度であれば、ノーマルに戻しても十分費用対効果が得られるでしょう。逆にフルチューンに近いような状態であれば、ノーマルに戻すほうがコストがかかってきます。その場合は、改造状態をキープしたまま査定してもらうのもひとつの手です。特にGRやTRDなどの純正パーツは人気がありますので、装着したままのほうが高くつく可能性もあります。
改造車のほうが好まれる場合もあるというのは、86だけでなくほかのスポーツカーでも考えられます。ひとつの方法と捉えてもいいでしょう。ただ、86の場合はほかのスポーツカーに比べ流通量が多くなります。改造車もそれに比例して多くなるということも考えると、販売店側からすれば改造車よりも売りやすいノーマル車のほうが市場では好まれる傾向といえます。
86の概要
かつてのトヨタの名車、AE86型レビン/トレノを車名の由来としたFRコンパクトスポーツカー。しかしその中身はAE86とはまるで別物で、水平対向4気筒エンジンを搭載し低重心化を実現した、スバルとの共同開発によるスポーツカーです。2012年4月に発売した初代は2.0Lエンジンを搭載。21年10月まで9年間にわたって販売され、同月に2代目へとモデルチェンジしました。現行モデルはエンジンが2.4Lへ拡大されており、車名にもトヨタワークスのGAZOOレーシングを意味するGRが付いています。
デビュー以来、スポーツ走行好きの愛好家に支持され、レースやラリーなどのモータースポーツでも多くの車両が走っています。現代では珍しい、入門用のFRスポーツカーとして世界中で人気を得ているクルマでもあります。
86を高く買い取ってもらうコツ
普段の移動も楽しくすごせ、サーキットやラリーなどのモータースポーツにも参加できる、まさにオールマイティな86。スポーツカーとしては流通台数が多く、身近に感じやすいクルマでもあります。高年式、低走行になればなるほど高額買取になるのは、ほかのクルマと同様。ノーマル、カスタムカー、チューニングカー問わず、使用感のある個体は避けられがちですので、キレイな状態の内外装を保つことが高額買取につながります。
ここからは買取額アップにつながる人気のカラーやオプションを紹介していきます。
86の人気グレード
初代86のグレード展開は、上からGTリミテッド、GT、G、そして競技ベース車のRCの4種類でスタートしています。このうちRCはエアコンすら付けられない完全な競技車でしたので、一般的なグレードではありませんでした。RCは16年のマイナーチェンジで廃止されています。
人気グレードは、17インチホイールやプロジェクター式ディスチャージヘッドライト、本革ステアリング&シフトノブが標準装着されたGT系。GTリミテッドはさらにリアスポイラーとアルカンターラと本革のコンビシートが備わっていましたが、流通数はGTのほうが多くなります。
かといってベーシックなGが安価になるわけでもなく、それなりにカスタムされている個体も多いので買取価格にはそこまでグレード間で大きな差は出ない場合が多くなります。差が出るのは装備類のほうが大きいかもしれません。例えば、トランスミッションはやはりMTが人気ですので、ATよりも当然買取額は高くなるでしょう。
GR系の特別仕様車やグレードは、人気でいえばプロパーなグレードとは比較にならないほど高くなります。GRと付くだけで何十万も上乗せされるほど、買取は高くなるでしょう。GRとGRスポーツは新車時の価格が高価だったこともあり台数も少なく、完全に需要のほうが供給数を上まわっている状況ですので高額の買取が期待できます。
完全限定のGRMNに関しては、100台しか生産されていない超希少モデルですので、もはや相場などの基準では計れない価値のモデルだといえます。オークションに出品された時点で大ニュースになるくらいのクルマと考えてもいいほどです。価格に関してはまったく予想ができませんが、相当な高額買取になることは間違いないですし、この先も価値は上がり続けるでしょう。
2代目のGR86は、ベースグレードのSZに比べ上級のRZのほうが流通量は圧倒的に多くなります。新車時の販売構成はRZが7割以上を占めるほどですので、単純にRZが中古車市場では多く見られます。しかし2代目も今のところグレード間で買取額の差は出にくくなっています。GR86自体の流通数がまだ少ないので全体的に買取相場は高めで推移していて、メーカー側の供給数が落ち着かない限り今後もしばらくこの傾向は続きそうです。
86の人気カラー
定番の白、黒、シルバーに加え、赤などの派手目な色が人気色となっているのは、スポーツカーらしい特色だといえます。なかでも、赤はカラーバリエーションの一色として最初から現在までラインナップされていますので、ほかの色に比べても多く見られます。
色の種類で査定が大きく変わるクルマではありませんが、やはり定番の白、黒、シルバーは査定にも強くなります。最新のGR86は、ガンメタリックのマグネタイトグレーメタリックが新車時では一番人気となっていますので、この色も買取額のプラスになる可能性があります。
86の人気オプション
ナビゲーションシステムやドラレコ、ETCなどの定番オプションは、装着されていればいくらかプラスされる程度。86のオプションといえば、やはりスポーツカーらしいオプションが買取額アップにつながります。市販されているパーツが非常に多い86は、評価点もさまざま。そのなかでも人気のオプションを紹介します。
外装ではノーマルのオリジナルが一番安定して高評価されますが、エアロパーツが評価される場合もあります。特にGRやTRD、モデリスタなどの純正系のエアロは、買取額アップにつながりやすくなります。なかでもフルエアロでコンプリートカスタムしている個体は、価格が跳ね上がる可能性も。これは、フルコンプリートしている個体が極端に少ないことが理由だと考えられます。
装着する際に数十万から百万円単位にまで及ぶ可能性のあるエアロパーツセットは、なかなか手が出しにくいもの。これがすべて装着されているクルマは、市場では非常に重宝されます。需要は多くないかもしれませんが、確実に欲しい人がいるのも事実。ゆえに買取市場では評価が高くなる可能性があります。
純正ワークス系だけでなく、TOM’Sなどのセミワークス系コンプリートカーともなると、本家GR系グレードよりも高額になることもしばしば。販売価格が非常に高額なので当然といえば当然なのですが、これも個体数が少ないことが一番の高額理由です。同様に著名なチューニングブランドのフルエアロコンプリートカーなども、高額になりやすい傾向です。
外装だけでなく、メカニズム系パーツをカスタム/チューニングしている個体も評価される場合があります。純正パーツが高評価につながるのはメカニズム系も同じですが、一番わかりやすいのはマフラーです。交換するだけで平気で数十万円単位の出費となるマフラーは、高額アフターパーツのひとつ。装着されているだけで高評価される可能性が高くなります。また、モータースポーツでの使用も考えている人ですと、車高調整式サスペンションが装着されている個体を狙うという人もいるほど。そういったニーズに当てはまる個体は、評価される傾向にあります。
カスタマイズしているからといって高額買取を諦めるのではなく、一度査定してもらうことがオススメです。思わぬ高評価が得られるかもしれません。